便秘の最大の害は直腸や大腸のガンになりやすいこと。とくに固腸壁にへばりついた便秘(宿便)だと、不用物が再吸収されて直腸粘膜にガンができやすいといわれています。このほか、大腸の癒着も起きやすくなります。今回は、便秘と痔の解消法について紹介します。
便秘とは?
「3日に1度でも定期的に出れば便秘ではない」「毎日出なければ便秘だ」などと便秘を定義していますが、これは必ずしも正しくはありません。便秘というのは便が出ないものをいいます。だから、排便のとき、少しでも残っているという感じがあれば便秘と考えるべきです。
かたい便、下痢便、強くいきまないと出ない便、ネチネチした粘着便などだと、出きらない、残った、という感じがします。これを「残便感」といいます。便秘は使の出る回数ではなく、残便感で判断するのが正しい方法です。
便を出さない習慣が便秘の原因
残便感は、なにかの理由で便の性質が変わったために、便の一部が直腸の壁に付いて残ったり、S字結腸の中に出きらないで残ったために起きます。これを放っておくと、つぎの便がつかえて出にくくなります。これが便秘です。
便の性質を変えるものは、便を出さない習慣、便の材料になる食事の質と食べ方、腸の刺激不足などがおもです。しかし、腸の長さが長すぎるため、途中で垂れ下がってしまつたものや、癒着があって腸の内径がせばめられたために起こる器質的便秘もあります。
便秘の治し方
便秘を治すには、自分がどの型の便秘なのかを知り、それに応じた治し方をすると早く、簡単に治せます。
- 習慣性便秘
出たいのをがまんじたり、消化のよいものばかり食べているとなる便秘。この型が大多数です。 - 長い腸型便秘
習慣性便秘がひどくなったもの。薬を飲んでも出ないものまであり、薬もだんだん強いものになってしまった、という型です。 - 器質性便秘
腹部や性殖器などの手術をしてから便秘になったもので、数は少ないが、やっかいなものです。
下剤や便秘薬の運用は絶対に避けたほうがよい
市販の下剤や便秘薬を長い間使っていると、その薬ではきかなくなり、もっと強い薬を使うようになります。これは薬によって、大腸が便を出そうとする動きを失ったために起こる現象で、時間がたてばたつほど強い薬でないときかなくなります。
このような状態が続くと、強い便秘薬のために大腸の粘膜がザラザラになってしまい、まったく機能しなくなってしまいます。こうなっては大変ですから、便秘薬や下剤の連用は避けなければなりません。
便秘薬 刺激の少ない便秘薬は腸内の水分を吸収し、便をやわらかくし排便させるもの。強いものは腸粘膜を刺激し、腸の動きを盛んにして出す。ヒマシ油、ダイオウなどがその代表的な薬。強い薬を連用すると大腸粘膜の機能が失われることもあります。
習慣性便秘は、出す習慣を身につけると治ります
習慣性便秘の人は、出す習慣をつければ薬を飲まなくても治せます。朝起きたら、水か牛乳をコップ一杯飲み、トイレヘ行って、出ても出なくても2分間は便を出す努力をします。そして、朝食は必ず食べましょう。
出す習慣が身につくまでは、便意を感じたら通勤途中でも下車してトイレへ行き、出すようにします。がまんをすると習慣が身につかず便秘になります。朝、トイレヘ行く前に数分間、腹筋などの体操をするのも効果的です。
むやみに下剤や便秘治療薬などを連用するのは、腸の運動をにぶらせるだけで、根本治療にはなりませんので避けたほうがよいでしょう。
長い腸型の便秘は、根気よく出す訓練を
日本人の大腸は西洋人に比べて一般的に長いのですが、習慣性便秘をくり返していると、長い大腸が垂れ下がってしまい、その底に便がたまって、出にくくなります。こうなった便秘を治すには、根気よく大腸を動かす運動をし、便を出す習慣を身につけ、便をためないことが大切です。
垂れ下がった腸を元に戻すには腹筋運動が最適です。毎朝、5〜6分間腹筋運動をすると回復してきます。
毎朝リンゴを一つ食べるのも効果的です。リンゴの豊富な食物繊維と水分が便をやわらかくし腸を動かします。便秘薬を使うなら、機械的緩下剤がよいでしょう。代表的なものはセンナ葉、硫酸マグネシウムなどです。
器質性便秘は専門医しか治せません
腹部や性殖器などの手術をしたあと便秘になった、というのは、手術によって大腸に癒着などが起こり、そのために便の通りが悪くなったものが多いようです。
このような場合は、専門医にバリウム検査してもらうとわかりますし、治すにも専門医に頼らなければ治りません。また、自然に癒着を起こす場合もあります。癒着の程度によって便秘の程度もさまざまですから、出ない人は、一度専門医の検診を受けましょう。
毎朝、腹式呼吸を10数回続けると便秘が治ります
毎朝、3〜5分間、腹式呼吸をすると便秘体操になります。朝起きたら、冷たい水か牛乳をコップー杯飲み、ついで両手を高く上げ、思いきり体を伸ばします。これで体は体操をする準備ができます。
つぎは腹式呼吸をします。足を少しひろげて立つか寝て、全身から力を抜ひろげて立つか寝て、全身から力を抜きます。お腹をふくらませて、空気をいっぱい吸い込み、10秒ほどかけてゆっくリと吐きだします。これを10数回くり返すと腹筋や背筋の体操になります。
腹筋・背筋体操を加えれば、効果はもっと上がりますが、急いで効果を期待するより、習慣化して長く続けるほうが大事です。
便秘を治し、便秘にしない食事法
「便秘の最大の原因は、朝食を食べないこと」と専門医は指適しています。魚介類、野菜類、くだもの類、海草類、大豆食品などを中心とした和食を朝食にしていれば、便秘には絶対にならないだろう、とさえ言い切っています。お米は繊維質の多い食品です。お米でも胚芽米や玄米ならさらによい、といいます。また、みそ汁を飲むのも便秘解消にはよい方法です。
肉類を多食すると便秘になりやすくなります。肉類は繊維質が少なく、便になる部分が少ないからです。また、精製された小麦粉で焼いたパンにバター、日玉焼きにハムという朝食では、やはり繊維が少なくて便秘になりやすいものです。
専門家がすすめる便秘解消法
流動食として用いられる重湯を1日3食、2日間続けます。重湯のほかに食べてよいものはリンゴ、野菜などの食物繊維の多いものだけ。これで習慣性の便秘なら、たいてい出ます。それでも出ないときは、刺激の少ない下剤を適量用います。
この方法は、治療用に用いられているものですから効果は抜群ですが、大切なことは、こうして、すっかり便を出してしまった後、毎朝、トイレヘいき、便を出す習慣をつけ、生活を規則正しくし、食事に気をつけ、適度な運動をし、再度便秘にならないようにすることです。
痔の予防法
痔はお尻に無関心だとだれにでも起きる病気です。痔の原因は遺伝とは無関係です。むしろ毎日の生活の仕方に原因があります。
例えば、便秘を続ける、固い便をむりして出す、よく拭かない、お風呂に入ったとき洗わない、肉類や糖分の多い食事をしている、立ち続けたり座りつづけて全身を動かさない、不規則な生活を続ける・・・こんなことが痔の原因になります。
痔という病気ははじめからひどくなるものではありません。ほったらかしておくからひどくなるのです。また、自党症状のないものもあります。そのために気づかず、ひどくします。変だと思ったら早めの手当てが大切です。
お尻を清潔にし、お尻の体操をしましょう
痔の予防には、お尻を清潔にすることがいちばん大切です。清潔にすることは、便がお尻に着かないよう何回も拭くことだ、と間違わないでください。便秘していないときは、便が適当なやわらかさで、しかも全部出てしまうからお尻に着いたりしません。ですから1回できれいにふけます。しかし、残便感があるときは、便がお尻に着きやすくなります。こんなときは何回も拭かずに、ぬるま湯で洗います。何回も紙で強くふくと傷がつき、それが痔の原因になります。
つぎはお尻の体操。肛門をキュッと締めます。これを毎日5分間ぐらい続けると、お尻の周囲の血行がよくなって痔の予防になります。痔は肛門周囲のうっ血が直接の原因ですから、お尻の体操でうっ血を解消してしまうわけです。
痔になったら、排便後は必ずぬるま湯で洗います
痔になったら、それ以上悪化させないことが肝心です。そのためには、排便後、ぬるま湯で洗うようにします。こうすると肛門周囲にたくさんいる雑菌の感染予防になり、血行をよくして傷や化膿が早く治ります。
洗う方法は、やわらかいガーゼなどを湯に浸して洗うのが普通ですが、温水洗浄器があれば便利です。洗った後はよく乾かすことを忘れないように。
おばあちゃんの知恵袋 便秘
知っているとちょっと便利になったり、いざという時に役立ったりする裏技や、生活の中で役に立つ知恵などを紹介します。
ここで紹介している民間療法を試す場合は、自己の責任においてお願いします。人によっては、体に合わない場合もありますので容態が良くならない場合はすぐに医療機関で受診するようにしてください。
便秘に効く食べ物
チンゲン菜
チンゲン菜は便通をよくする野菜の一つです。熱を冷ます効果と胃腸の機能を回復させる効果があります。炒めたり、スープにしたものを毎日食べると、便秘に効きます。また、糖尿病にも効果的です。
さといも
さといもを常食すると、胃腸の調子が良くなります。また、腸のとどこおりをなくす作用があるので、慢性の便秘に効果的です。さといもを生のまま食べると、中毒症状を起こすことがありますので、生のまま食べてはいけません。
はくさい
はくさいを良く煮て食べると消化がよく、体の中の余分な熱を冷まし、便秘解消に効果があります。胃に熱があって、おなかのあたりが「もやもや」したときに食べると効果的です。
たけのこ
たけのこは食物繊維が豊富で、腸をなめらかにする効果が高い食べ物です。便秘がちの人や、コレステロールの高い人に良い食品です。また、たけのこ、カリウムを豊富に含んでいます。カリウムはナトリウム(塩分)を排泄する役割があり、高血圧やむくみをとる効果があります。
たけのこのえぐみの元は、シュウ酸というものです。シュウ酸は、カルシウムと結合すると結石になりやすいと言われています。 シュウ酸を取り除くために、あく抜きを行いましょう。
納豆
納豆を2~3日続けて食べれば、お通じがよくなります。
朝、1杯の塩水
朝、起きたとき塩水を1杯飲むとお通じが良くなります。
大根の葉ジュース
大根の葉をすりつぶし、オレンジジュースに混ぜて飲むと、お通じが良くなります。
アロエジュース
アロエを生のままこし、オレンジジュースに混ぜて飲むと、お通じが良くなります。
みそ湿布
ちゃわん1杯分のみそに、おろしたしょうがを加えて、熱湯を少し注ぎまぜあわせたものを、ガーゼなどにのばし、へその周りを湿布します。湿布の上から蒸しタオルを10分ほど当てていると、お通じが良くなります。
あさがお下剤
あさがおの種を良く乾燥させ、すりつぶして粉末状にしたものを小さじ1杯服用すると効きます。
のいばら下剤
のいばらの実を良く乾燥させ、10粒ほど服用すると効きます。
じゃがいも汁
じゃがいもをするおろし、こしたものを温めて、はちみつを加えて飲むと効きます。