大根おろしは、私たち日本人にとって、欠くことのできない味覚のひとつです。焼き魚にそえて、あるいはあえものに、天つゆの中に、そばの薬味として……。しかし、そのおろし方となると、意外に無関心な人が多いようです。大根のおろし方にも、ちやんとしたコツがあります。ただおろし器でゴシゴシとおろせばいい、というものではありません。そこで、今回は簡単においしい大根おろしともみじおろしの作り方を紹介します。
大根おろしの作り方
大根は、繊維が縦に走っています。大根をおろすときには、この繊維と垂直におろしましょう。大根を斜めにおろしたり、繊維と同じ方向におろしたりすると、きめが粗く、水っぽく仕上がってしまいます。大根をおろすときは、繊維を断ち切るようにおろすことが大切です。
大根をおろすときには、おろし器に大根を必ず垂直にあてておろします。そうすると、繊維が細かく切れて、滑らかで舌ざわりのいい大根おろしになります。太い大根の場合には、縦半分に切ると、おろしやすくなります。
大根おろしはどの部分を使うか?
大根おろしは、少しピリッと辛みのあるほうがおいしいともいわれますが、一般に大根は葉に近い部分ほど甘みがあり、反対に下の細いほうへいくにつれて辛みが増しますので、ピリッとした辛さがお好みの方は、下の方を使います。それぞれ好みの部分をおろすとよいでしょう。
また、一般的に冬の大根は甘く、夏の大根は辛く水っぽいといった傾向がありますが、品種改良により夏の大根でも甘いものが増えてきています。
辛すぎる大根おろし
大根おろしで、ビックリするくらい辛かった経験はないでしょうか?そんなときは、大根おろしに少し酢をたらせば、辛味が弱まります。また、しばらく放っておくと、辛味の成分が蒸発して、辛さが弱まります。
一本の大根を使い分けてこそ料理上手。使い残りはラップに包んで冷蔵庫で保存しましょう。
一本の大根も、部分によってその味も徴妙にちがいます。大根本来のうまみがあるのは中央部です。ブリ大根やおでんなどの煮ものに最適です。
また、残った大根はラップに包んで冷蔵庫に保存し、あとで用途に応じて調理をするといいでしょう。
ところで、スーパーでは、はじめから葉の部分を切り落として、店先に並べてある大根をよく見かけますが、大根を買うときには、できるだけ葉のついたものを選びましょう。葉に栄養があるということのほかに、新鮮さや「す」が入っていないかどうかを見きわめるのに、葉が役立つからです。
葉がみずみずしく、生き生きとしていればもちろん新鮮ですし、葉のもとの部分を折ってみて、「す」が入っているようなら、大根にも「す」が入っています。
もみじおろしの作り方
フグ刺しやフグちり、その他の鍋物にも、薬味としてよく使われるのが、もみじおろしです。大根の風味と唐辛子のピリリとした辛味がまじって、主役の味を引き立ててくれますが、もみじおろしとはきれいないい名ですね。
紅おろし、赤おろし、立田おろしなどの名もあるようで、最近はびん詰になって市販もされていますが、家庭で手軽に作れます。
簡単にもみじおろしを作るには
手っ取り早く作るには、大根おろしに赤唐辛子の粉、つより一味唐辛子をまぜればいいのですが、やはり大根と一緒にすりおろしたほうが、辛みが効きます。
きれいなもみじおろしを自分でつくる方法
昔からのやり方として、大根に箸で穴をあけ、赤いタカノツメの種子を出したものを、箸の先で大根の穴に差し込んで、いっしょにおろす方法があります。しかし、この方法ですと、おろしたことのある人はおわかりでしょうが、唐辛子が抜け落ちてしまったり、途中でちぎれたりして、なかなかうまくもみじおろしになってくれません。原因は、唐辛子が乾いているために、うまくおろせないようです。
そこで、まず唐辛子をぬるま湯に、5分ほどひたしておきます。それから、大根の穴に差し込んでもいいのですが、それよりも輪切りにした大根に、包丁で切れ目を入れて、そこに唐辛子をはさむようにします。そして、唐辛子を入れた切れ込みのところを、手でギュッとはさむように持って、おろしますと、唐辛子が抜け落ちたりしないで、大根と均一にまじって、きれいなもみじおろしになります。
もみじおろしといえば、にんじんをまぜた大根おろしも、もみじおろしと呼ばれています。ところが、大根とにんじんは相性が悪いので、いっしょにおろしてはいけないと昔からいわれています。
にんじんにはアスコルビナーゼという、ビタミンCを破壊する酵素が合まれているために、大根のビタミンCが失われてしまうからです。時間が経てばたつほど、ビタミンCの破壊が進みますのでこのもみじおろしの場合は、食ベる寸前におろすようにしましょう。
また熱やお酢を加えると、アスコルビナーゼの働きが弱くなるので、調理して食べる分には問題ありません。